兄宇迦斯が仕掛けた罠を退け、宇陀を越えた神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)。
弟宇迦斯のもてなしを受けた一行は、さらに大和の奥へと進みます。
しかし、その行く手には、まだ神倭伊波礼毘古命を迎え入れようとしない者たちがいました。
忍坂(おさか)と呼ばれる地。
そこには、大勢の勇猛な者たちが集まり、一行を待ち構えていたのです。
これまで幾度となく困難を乗り越えてきた神倭伊波礼毘古命。
忍坂では、どのような出来事が待ち受けているのでしょうか。
忍坂の大室に待ち構える八十建
宇陀を後にした神倭伊波礼毘古命の一行は、忍坂の大室(おおむろ)へとたどり着きました。
そこには、土雲八十建と呼ばれる者たちが待ち構えていました。
八十建とは、特定の一人を指す名前ではなく、多くの勇猛な者たちを表す呼び名です。
彼らは大室に集まり、神倭伊波礼毘古命の一行を待ち受けていたのです。
八十建を迎えるための宴
神倭伊波礼毘古命は、八十建に食事を振る舞うことにしました。
一見すれば、それは相手をもてなすための宴です。
しかし、その裏では、八十建を討つための準備が進められていました。
神倭伊波礼毘古命は、八十人の膳夫(かしわで)を選びます。
膳夫とは、食事の準備や給仕を担う者たちのことです。
そして、それぞれの膳夫に刀を持たせ、外から見えないように隠させました。
膳夫たちは、八十建に食事を運ぶ役目を与えられていました。
けれども、その役目は食事を振る舞うことだけではありません。
神倭伊波礼毘古命は、彼らに命じました。

合図となる歌が聞こえたなら、一斉に刀を抜き、目の前の者を討つように。
こうして、宴の準備が整えられました。
八十建を迎える食事の場には、誰にも見えない刃が隠されていたのです。
歌を合図に、刀を抜け

やがて、八十建のもとへ食事が運ばれました。
膳夫たちは、それぞれに割り当てられた者の前へ進みます。
その身には、あらかじめ命じられた刀が隠されていました。
宴が始まろうとした、そのとき。
合図となる久米歌が響きました。
忍坂の大室に集まった者たちを討つことを歌った、その歌が響いた瞬間、膳夫たちは隠していた刀を抜きました。
食事を運ぶために近づいていた者たちが、一斉に八十建へ襲いかかります。
八十建は、目の前にいた膳夫たちによって討たれました。
大勢の勇士たちが待ち構えていた忍坂の大室。
そこで決着をつけたのは、正面からの武力の衝突ではなく、宴に仕組まれた策略でした。
神倭伊波礼毘古命は、こうして土雲八十建を討ち取ったのです。
忍坂を越え、大和の奥へ
忍坂の大室に集まっていた八十建は、神倭伊波礼毘古命の策によって討たれました。
一行は、またひとつ大和へ進む道を切り開いたことになります。
しかし、東征はまだ終わりではありません。
日向を出発し、長い道のりを経て大和へと近づいてきた神倭伊波礼毘古命。
その歩みの先には、なお従わぬ者たちがいました。
忍坂での戦いを終えた一行は、さらに大和の地へと進んでいきます。
神倭伊波礼毘古命が目指す国づくりは、まだその途上にあったのです。
次回予告

忍坂の大室で八十建を討ち、さらに大和の奥へと進む神倭伊波礼毘古命。
しかし、その地にはまだ、一行の行く手を阻む者たちが残されていました。
大和をめぐる戦いは、次の局面を迎えます。
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・【前回物語】宇陀に仕掛けられた罠 ~ 兄宇迦斯と弟宇迦斯
宇陀で神倭伊波礼毘古命を待ち受けていた兄宇迦斯と弟宇迦斯。兄が仕掛けた罠は弟の知らせによって明らかになり、一行は危機を退けます。東征の道は、さらに大和の奥へと続いていきます。

