水は命を育み、すべてを洗い流し、つねに形を変えて流れ続けます。
古来の日本人は、この“流れ”そのものに神の姿を感じ、その象徴として龍を敬ってきました。
そして現代、心の停滞を感じるとき、人生が上手く流れないとき、「龍神祝詞」はその流れを再びひらく祈りとして、多くの人が唱える言葉になっています。
この記事では、龍神祝詞の背景や意味など、やさしく丁寧に解説していきます。
※本記事は、特定の信仰や解釈を断定するものではなく、日本神話や神社文化を理解するための参考情報としてまとめています。
龍神祝詞とは? ー “運の流れ”を整えるための祈り
龍神祝詞は、龍神と呼ばれる水の神に、「私の人生の流れを良い方向へと整えてください」
という願いを込めて唱える祈りの言葉です。
ここで言う“流れ”とは、金運や仕事運だけではありません。
・人との縁の流れ
・情報やチャンスの流れ
・心の感情の流れ
・身体のエネルギーの流れ
人生を形づくるすべての流れが淀むと、物事は動かなくなります。
龍神祝詞は、その淀みを洗い流し、再び循環を取り戻すための言霊なのです。
神頼みというより、龍神とつながることで「自分の内側と世界の流れを整える」、そのための祈りと言った方が近いかもしれません。
龍神祝詞の背景 ー 日本の自然観と、水の神・龍神

水は豊かさを運ぶ象徴です。
雨は大地を潤し、川は生命を運び、海はすべてを受け入れて浄化します。
その水の働きを人格神として表した存在が「龍神」です。
龍神は次の“流れ”を司る存在と考えられています。
・お金の流れ
・縁の流れ
・仕事や機会の流れ
・感情や気の流れ
日本人が龍神を強く求めた背景には、農耕文化があります。
雨が降らなければ作物が育たず、人の暮らしも立ち行かない。
だからこそ、龍神への祈りは日々の生活に直結する重要な儀式でした。
神話に登場する“オカミ”の神
『古事記』『日本書紀』には、水を司る二柱の神が登場します。
・高龗神(たかおかみのかみ)
・闇龗神(くらおかみのかみ)
この「龗(おかみ)」という神は、古語で“龍神”を意味すると考えられています。
山に降る雨、谷を流れる水の力を神格化した存在だったのでしょう。
龍神祝詞は、こうした古代の水神信仰を背景に、民間で育まれた祈りの言葉だと言えます。
龍穴と呼ばれる“気が湧く場所”
龍神ゆかりの聖地として、次のような神社が有名です。
・京都 貴船神社
・奈良 室生龍穴神社
・神奈川 九頭龍神社
・滋賀 都久夫須麻神社(竹生島)
これらは日本三大龍穴としても知られ、水の気がとくに強く流れている場所とされています。
龍神祝詞を唱える人の多くが、「水の音がする場所での祈りは心に響く」と感じる理由もここにあります。
龍神祝詞(全文)
高天原に坐し坐して
天と地に御働きを現し給う龍王は
大宇宙根源の御祖の御使いにして一切を産み一切を育て
萬物を御支配あらせ給う王神なれば
一二三四五六七八九十の十種の御宝を己が姿と変じ給ひて
自在自由に天界地界人界を治め給う
龍王神なるを尊み敬いて
真の六根一筋に御仕え申すことの由を受け引き給ひて
愚かなる心の数々を戒め給ひて
一切衆生の罪穢れの衣を脱ぎ去らしめ給ひて
萬物の病災をも立所に祓い清め給ひ
萬世界も御祖のもとに治めせしめ給へと
祈願奉ることの由をきこしめして
六根の内に念じ申す大願を成就なさしめ給へと
恐み恐み白す
龍神祝詞の構造と意味
龍神祝詞は、大きく3つの流れで構成されています。
前半は宇宙と水の働きを司る龍王を讃える部分です。
祝詞の冒頭で、まず龍神の存在そのものを讃えることで、心を清らかな状態へと整えていきます。
そして中盤では、祈る側の姿勢が語られます。
龍神祝詞は願望達成の祈りに見られがちですが、本質的には “浄化と誓いの言霊” なのです。
そして最後に、龍王の御心に沿って動けるように、自分の人生の流れが整うよう祈ります。
ここで重要なのは、「願いだけを叶えてほしい」のではなく、 “願いにふさわしい自分へと整う”ことを祈る言葉になっている点。
龍神祝詞は、自分の心構えや在り方そのものを調整する祈りと言えます。
龍神祝詞(全文訳)
高天原に鎮座し
天と地に姿を現す龍王は
宇宙の創造主のお使いであり
あらゆるものを産み、あらゆるものを育てる万物を支配する王である。
十種の御宝にその姿を変え
自由自在に天上界、地上の世界、人間界を治める龍王神を敬い、
六根(眼、耳、鼻、舌、身、意)すべて一筋にお仕え致します。
愚かなる心を戒めます。
この世に生きるもの全ての罪穢れを祓い清め、
萬世界を治めくださいますようお願い申し上げます。
六根で思う大きな願いが成就するよう恐れ多くも申し上げます。
龍神祝詞で期待される主なご利益
祈りを続けることで、次のような変化が起こるといわれています。
1. 金運・財運がよくなる
お金は水と同じ「流れるもの」。
心の抵抗や思い込みが外れることで、入ってくる流れが整います。
2. 仕事運・キャリアの発展
アイデアが湧き、必要な人が現れ、タイミングが合うようになると言われます。
3. 人間関係の改善・良縁
“縁の流れ”が変わることで、自然と環境が整っていきます。
4. 心身の浄化と健康
水の神の祈りは、感情の澱(おり)を流し、心を軽くします。
5. 直感とシンクロニシティの増加
「龍が導いてくれたようだった」 という不思議な一致が増えるのも特徴。
龍神と縁の深い神社
龍神祝詞と相性が良いとされる神社を紹介します。
・貴船神社(京都)
日本屈指の水の聖地
・室生龍穴神社(奈良)
実際の龍穴が残る場所
・九頭龍神社(箱根)
金運・縁結びで有名
・江の島神社(神奈川)
五頭龍の伝説を持ち、海と女性性のエネルギーが強く感じられる場所です。
聖地参拝と龍神祝詞を合わせると、より深い心の変化を感じる人も多いようです。
まとめ:龍神祝詞は“流れを整える祈り”
龍神祝詞は、願望を叶える魔法の言葉ではありません。
水が澄んで流れるように、心と人生の流れを整えていくための祈り です。
・心が重いとき
・先が見えないとき
・変わりたいと願うとき
そんな節目にこそ、龍神祝詞は静かに力を発揮します。
次回予告

次回ご紹介するは、 「ひふみ祝詞」 の記事を予定しています。
宇宙のリズムを表す“数の言霊”「ひふみ祝詞」 。
心と流れを整える不思議な祈りの言葉を、やさしく解説していきます。


