天地がまだ混沌としていた太古、天の命を受けて世界に“かたち”を与えた一組の神がいました。
伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)
二神の物語は、日本列島を生み、森羅万象の神々を生み、生と死を分け、最後に“清め(禊)”によって新たな秩序を生む日本神話の大動脈そのものです。
本記事では、国生みの父神・伊邪那岐命に焦点を当て、そのご利益や神話、ゆかりの神社までを解説します。
神様の基本情報

名前(正式名・別名)
伊邪那岐命(いざなぎのみこと)/伊弉諾命(いざなぎのみこと)
主なご利益
・厄除・開運、清め・浄化(禊の祖)
・夫婦和合・縁結び、子孫繁栄
・家内安全・延命長寿
・事始めの守護(新規事業・移住・家づくり など)
※ご利益は各地の信仰・伝承に基づく後世の解釈を含みます。
所属する神系譜
神世七代の第七代に生まれた男女一対の創世神(イザナギ・イザナミ)
国生み・神生みを経て、禊で三貴子(天照大神・月読命・建速須佐之男命)を生む父神。
神格と性質(象徴)
・創造と秩序の再建
国生み・神生みの創造神であり、黄泉帰り後の禊による浄化と再生の象徴
・境界を定める神
黄泉比良坂(よもつひらさか)で「千引の岩」を置き、生と死の境界を確定
・父性と統治
三貴子に高天原・夜の国・海原の統治権を委ねる、父なる司令神
神様を表すシンボル(動物・アイテム・色など)
・天沼矛(あめのぬぼこ):国生みの起点となる神器
・千引の岩:黄泉と現世を隔てる巨大な境界石
・櫛、桃、橘:黄泉逃走や禊で現れる“身近な神器”
・清らかな水/海辺:禊と再生の場
・白、澄明:浄化、再生を象徴する色
登場する神話・物語
登場神話
『国生み』
天の命を受け、天沼矛で混沌の海をかき回し、滴が固まって淤能碁呂島(おのごろじま)が誕生。
結婚の儀を整え直したのち、大八島国(淡路・四国・九州・壱岐・対馬・佐渡・本州 ほか)を次々と生む。
『神生み』
海・風・山など自然神を多数誕生させるが、火之迦具土神(カグツチ)の出産で伊邪那美命が致命傷を負い、黄泉へ。
怒った伊邪那岐命は十握剣でカグツチを斬り、その血や身体からも武神などが生まれる。
『黄泉下りと離別』
イザナミを追って黄泉国へ行くが、禁忌を破って腐敗した姿を見てしまい、決別。
追手から逃れ、千引の岩で二度と交わらぬ境界を確定。
「日々千人が死ぬ」「日々千五百人を生ませる」という生死の起源が定められる。
『禊(みそぎ)と三貴子の誕生』
阿波岐原(宮崎)で禊を行い、多くの神を生んだのち、両目と鼻から『三貴子』が誕生。
左目:天照大御神
右目:月読命
鼻:建速須佐之男命
三界の統治を委ね、自らは淡路(伊弉諾神宮の伝承)または淡海の多賀(多賀大社の伝承)へ隠退。
ゆかりの神社
【全国の代表的な神社】
- 伊弉諾神宮(兵庫県淡路市)
イザナギの幽宮(かくれみや)伝承地。国生みの中心聖地。 - 多賀大社(滋賀県犬上郡)
『古事記』の「淡海の多賀」伝承を継ぐ古社。
【関東・千葉県の神社】
- 三峯神社(埼玉県秩父市)
主祭神に伊弉諾尊・伊弉冉尊。
創祀伝承はヤマトタケル。 - 筑波山神社(茨城県つくば市)
男女二神(イザナギ・イザナミ)を祀る“夫婦和合”の聖地。 - 櫻木神社(千葉県野田市)
神様のエネルギーとメッセージ
エネルギーの質
- 乱れを整え、穢れを祓い、物事をはじめ直す力
- “境界”を定め、秩序を取り戻す父性的エネルギー
日常生活へのメッセージ
- うまくいかない時は、まず清めて整える(環境・習慣・人間関係)
- 悲しみや喪失の後でも、やり直す力は必ず芽生える
- 理想と現実の狭間で迷うなら、優先順位と境界線を定めよう
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神話解説記事
関係の深い神
- 伊邪那美命(母神・黄泉津大神)
- 火之迦具土神(火の神)
- 天照大御神
- 月読命
- 建速須佐之男命
神社紹介リンク


