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祓詞(はらえことば)とは?~心と場を清める、日本古来の祈りの言葉~

祝詞

前回の記事で、祝詞(のりと)は「神様に感謝や祈りを伝える言葉」とお伝えしました。

その祝詞の中でも、最も基本的で昔から広く唱えられてきたのが祓詞(はらえことば) です。

神社の祭典や祈祷の前には必ず唱えられ、また神棚への拝礼や日常生活の中でも使われてきました。

祓詞は「特別な人だけが唱える難しいもの」ではありません。
心と場を清めるために誰でも口にできる、身近な祈りの言葉なのです。

祓詞はらえことばとは何か

祓詞はらえことばとは何か

祓詞は、神道において罪や穢(けが)れを祓い清めるために唱える祝詞です。

神社では、祭典や祈祷を始める前に祓詞を唱えて、自分自身や神前に供える物、場を清めます。
これは「修祓(しゅばつ)」と呼ばれる儀式で、神様に祈る前の大切な準備です。

祓詞は神職だけの専用のものではありません。

私たちも、自宅の神棚や玄関先などで、朝の祈りや気持ちのリセットに唱えることができます。

似た名前の「大祓詞(おおはらえことば)」という祝詞と混同されやすいですが、祓詞は短く日常的に使いやすい祝詞です。

それに対し、大祓詞は年に2回(6月・12月)の「大祓」で奏上される長文の祝詞です。
大祓詞の方がより強力な清めの効果があります。

神話に由来する祓いの思想

祓詞の背景には、日本神話に登場する 伊邪那岐命(いざなぎのみこと)の禊(みそぎ) の物語があります。

伊邪那岐命は、亡くなった妻である伊邪那美命を追って黄泉の国へ赴きましたが、その地の穢れに触れてしまいました。

現世に戻ったあと、筑紫(日向の阿波岐原)で身を清める「禊祓(みそぎはらえ)」 を行ったと伝えられています。

このときに生まれたのが、祓戸(はらえど)の大神 と呼ばれる4柱の清めの神々です。

  • 瀬織津比売(せおりつひめ)…穢れを川の流れに乗せて運び去る神
  • 速開都比売(はやあきつひめ)…穢れを飲み込み消し去る神
  • 気吹戸主(いぶきどぬし)…清らかな息吹で穢れを吹き払う神
  • 速佐須良比売(はやさすらひめ)…祓った穢れを遠くへ送り去る神

祓詞は、この祓戸四神に対して 「罪や穢れを祓い清めてください」 と願う言葉なのです。

祓詞の本文と意味

実際の祓詞は、古語で次のように唱えられます。


けまくもかし
伊邪那岐大神いざなぎのおおかみ
筑紫つくし日向ひむかたちばな

小戸おど阿波岐原あわぎはら
みそはら給ひたまいし時に

せる祓戸はらえど
大神等おおかみたち
諸諸もろもろ禍事まがごと

つみけがれをば
はら給ひたまい
きよたまへとまをす事を

聞こしせと
かしかしみもまを


この古語を
やさしい現代語にすると、こうなります。


恐れ多い伊邪那岐大神が
筑紫の日向の阿波岐原で
禊をされたときにお生まれになった
祓戸の大神たちよ
もしも様々な災いや
罪や穢れがあるならば
祓い清めてくださいと申し上げます
どうかお聞き届けください


短い中に、心身や場を清めて新たな気持ちで神様に向かうという祈りが込められています。

祓詞の使い方と日常への取り入れ方

祓詞は、神社だけでなく 私たちの日常生活でも唱えることができます。

たとえば…

  • 神社に参拝する前に、心を整えるために唱える
  • 毎朝、神棚に手を合わせる前に唱える
  • 気持ちがざわついたときや空気を清めたいとき
  • 大切な行事や仕事の前に心をリセットしたいとき

声に出しても、心の中で唱えても構いません。

まずは 言葉に心を込めること を大切にしてみてください。

また、祓詞をさらに短くした略祓詞(りゃくはらえことば)もあります。


はらたまきよたま
まもたまさきわえたま


これだけでも、祓詞と同じように 心がすっと落ち着き、空気が変わる感覚 を得られるはずです。

仏教儀礼にも受け継がれた祓(中臣祓)

実は、祓いの文化は神道だけにとどまりません。

古くは仏教の儀礼にも取り入れられました。

たとえば東大寺で行われる修二会(しゅにえ)という法会では、「大中臣祓(おおなかとみのはらえ)」 と呼ばれる儀式が行われています。

これは大祓詞を基に、密教や陰陽道などの要素と融合してできたもので、儀式の場を清め、参加する僧侶の心身を整えるために行われます。

神道と仏教が混じり合った「神仏習合」の中でも、祓いの思想は大切に受け継がれてきたのです。

祓詞が今に伝えること

祓詞は、単なる昔の言葉ではありません。
むしろ、忙しくストレスの多い今の時代にこそ役立つ存在です。

  • 気持ちをリセットし、前向きな心を取り戻す
  • ネガティブな感情を手放す
  • 忙しい日々に「静かな時間」をつくる

祓詞を唱えることは、日本古来の「清浄」という感覚を日常の中でそっと取り戻す行為でもあります。

まとめ

祓詞(はらえことば)は、神社だけの特別なものではなく、今を生きる私たちの暮らしにも取り入れられる、心と場を清める言葉です。

伊邪那岐命の神話に由来する祓詞を唱えることで、罪や穢れを祓い、心を整え、清らかな気持ちで新しい一日を迎えられます。

ほんの数十秒でできる「祓詞の時間」を、あなたの日常にも取り入れてみてはいかがでしょうか!

行玄
行玄

次回は、祓詞よりも長く力強い「大祓詞(おおはらえことば)」についてご紹介します。

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